簿記3級 経過勘定(前払費用・未払費用・前受収益・未収収益)の違いと仕訳

簿記3級の決算整理で、とくに混乱しやすいのが経過勘定です。「前払費用」「未払費用」「前受収益」「未収収益」の4つは、名前が似ていて、資産なのか負債なのか、借方なのか貸方なのか、迷いやすい論点です。この記事では、4つの違いを、見分ける考え方から、月割計算の手順、具体例、翌期首の再振替仕訳まで、順番に説明します。

経過勘定とは

経過勘定とは、費用や収益を、その期の分だけに、正しく計上するために使う勘定です。お金を支払った(受け取った)時期と、そのサービスを受けた(提供した)時期が、ずれることがあります。そのずれを、決算のときに調整します。

たとえば、10月1日に1年分の家賃を支払った場合、決算日が12月31日なら、当期に使った家賃は3か月分だけです。残りの9か月分は、来期の費用なので、当期の費用から外します。この調整で使うのが、経過勘定です。

4つの経過勘定を見分ける考え方

4つの経過勘定は、「費用か収益か」と、「すでに受け払いしたか、まだか」の2つの軸で整理できます。

すでに受け払い済み
(翌期分を取り除く)
まだ受け払いしていない
(当期分を加える)
費用(支払うもの)前払費用(資産)
支払った家賃や保険料の、翌期分
未払費用(負債)
当期に発生したが、まだ払っていない給料や利息
収益(受け取るもの)前受収益(負債)
受け取った家賃や手数料の、翌期分
未収収益(資産)
当期に発生したが、まだ受け取っていない利息や家賃

「前」がつく2つ(前払い・前受け)は、すでにお金が動いたもので、翌期分を取り除く調整です(繰延べ)。「未」がつく2つ(未払い・未収)は、まだお金が動いていないもので、当期分を加える調整です(見越し)。

資産になるのは、前払費用と未収収益です(あとでサービスを受ける権利、あとでお金を受け取る権利)。負債になるのは、未払費用と前受収益です(あとで支払う義務、あとでサービスを提供する義務)。

月割計算の手順

経過勘定の金額は、月割で計算します。次の3ステップで求めます。

  1. 全体の期間(月数)を確認する。(例:1年分なら12か月)
  2. 当期に経過した月数と、翌期にかかる月数を数える。(決算日までに何か月たったか)
  3. 総額 ÷ 全体の月数 × 対象の月数で、金額を求める。

利息の場合は、元本 × 年利率 × 月数 ÷ 12で計算します。

具体例で、4つの仕訳を確認しよう

決算日は、いずれも12月31日とします。

例1:前払費用(家賃の前払い)

11月1日に、6か月分の家賃90,000円を支払った。

  • 11月・12月の2か月分が当期、残りの4か月分は翌期です。
  • 前払いの金額:90,000円 × 4か月 ÷ 6か月 = 60,000円
  • 仕訳:(借)前払家賃 60,000/(貸)支払家賃 60,000

支払家賃(費用)を減らす仕訳なので、貸方に記入する点に注意します。

例2:未払費用(利息の未払い)

10月1日に、1,000,000円を年利3%で借り入れた。利息は、返済時に支払う約束で、まだ支払っていない。

  • 10月・11月・12月の3か月分が、当期に発生しています。
  • 未払いの金額:1,000,000円 × 3% × 3か月 ÷ 12か月 = 7,500円
  • 仕訳:(借)支払利息 7,500/(貸)未払利息 7,500

例3:前受収益(家賃の前受け)

10月1日に、6か月分の家賃180,000円を受け取った。

  • 10月・11月・12月の3か月分が当期、残りの3か月分は翌期です。
  • 前受けの金額:180,000円 × 3か月 ÷ 6か月 = 90,000円
  • 仕訳:(借)受取家賃 90,000/(貸)前受家賃 90,000

受取家賃(収益)を減らす仕訳なので、借方に記入します。

例4:未収収益(利息の未収)

7月1日に、600,000円を年利2%で貸し付けた。利息は、返済時に受け取る約束で、まだ受け取っていない。

  • 7月から12月までの6か月分が、当期に発生しています。
  • 未収の金額:600,000円 × 2% × 6か月 ÷ 12か月 = 6,000円
  • 仕訳:(借)未収利息 6,000/(貸)受取利息 6,000

4つの仕訳の型(まとめ)

種類借方貸方費用・収益への影響
前払費用前払家賃(資産)支払家賃(費用)費用が減る
未払費用支払利息(費用)未払利息(負債)費用が増える
前受収益受取家賃(収益)前受家賃(負債)収益が減る
未収収益未収利息(資産)受取利息(収益)収益が増える

迷ったときは、「資産は借方、負債は貸方」と覚えておくと、4つの仕訳の向きを、確実に決められます。前払費用と未収収益は資産なので借方、未払費用と前受収益は負債なので貸方です。

貸借対照表・精算表での扱い

貸借対照表では、前払家賃・前払保険料などは「前払費用」、未収利息・未収家賃などは「未収収益」、前受家賃などは「前受収益」、未払利息・未払給料などは「未払費用」として、まとめて表示します。

精算表では、これらの勘定は、試算表にはない勘定なので、修正記入欄の空いた行に、書き足します。精算表の解き方は、簿記3級 精算表の書き方・解き方で説明しています。

翌期首の再振替仕訳

決算で計上した経過勘定は、翌期の期首に、反対の仕訳をして、元に戻します。これを再振替仕訳といいます。たとえば、例1の前払家賃は、翌期首に次のように仕訳します。

  • (借)支払家賃 60,000/(貸)前払家賃 60,000

こうすることで、翌期の家賃の支払いや受け取りと合わせて、翌期の費用・収益が、正しく計算されます。4つの経過勘定とも、再振替仕訳は、決算整理仕訳の借方と貸方を、そっくり入れ替えた形です。

ミスしやすいポイント

  • 前払いと未払いを取り違える。「すでに払った」なら前払い(資産)、「まだ払っていない」なら未払い(負債)です。
  • 費用の勘定を減らすときに、借方に記入してしまう。前払いは、費用を減らすので、費用の勘定は貸方です。
  • 月割の月数を、数え間違える。支払日(受取日)が月の初日の場合は、その月を1か月として数えます。
  • 利息の計算で、年利率を月割にするのを忘れる。年利率は1年分なので、月数÷12を掛けます。
  • 再振替仕訳を、忘れる。翌期首に、決算整理仕訳の反対の仕訳をします。

練習問題で、身につけよう

経過勘定の仕訳は、繰り返し練習すると、パターンで解けるようになります。

第3問全体の出題パターンや勉強の進め方は、簿記3級 第3問の対策で解説しています。