簿記3級の決算整理で、毎回のように出題されるのが減価償却です。計算そのものは単純ですが、「残存価額を引くのか」「月割にするのか」「間接法と直接法で仕訳がどう変わるのか」で、迷いやすい論点でもあります。この記事では、定額法による減価償却の計算から、間接法・直接法の仕訳、期中に取得・売却した場合の月割計算まで、具体例で順番に説明します。
減価償却とは
建物や備品、車両などの固定資産は、使い続けるうちに、少しずつ価値が下がっていきます。たとえば、600,000円で買った備品を5年間使うなら、その600,000円は、使う5年間に分けて、毎期の費用にするのが自然です。この手続きを、減価償却といい、毎期の費用を減価償却費といいます。
減価償却の対象は、建物・備品・車両運搬具などです。土地は、使っても価値が減らないので、減価償却をしません。これは、とても大切なポイントです。
定額法の計算
3級で出題される減価償却は、定額法が中心です。毎期、同じ金額の減価償却費を計上する方法で、次の式で求めます。
- 1年分の減価償却費 =(取得原価 - 残存価額)÷ 耐用年数
取得原価は、固定資産を買ったときの金額(付随費用を含みます)、残存価額は、使い終えたあとに残ると見込まれる価値、耐用年数は、使える年数です。
具体例1:残存価額がゼロの場合
取得原価600,000円の備品を、耐用年数5年、残存価額ゼロ、定額法で減価償却する。
- 減価償却費:(600,000円 - 0円)÷ 5年 = 120,000円
問題文に「残存価額ゼロ」とあれば、取得原価を耐用年数で割るだけです。
具体例2:残存価額が、取得原価の10%の場合
取得原価540,000円の備品を、耐用年数6年、残存価額は取得原価の10%、定額法で減価償却する。
- 残存価額:540,000円 × 10% = 54,000円
- 減価償却費:(540,000円 - 54,000円)÷ 6年 = 81,000円
残存価額が割合で示されているときは、まず金額を求めてから、取得原価から引きます。
記帳方法:間接法と直接法
減価償却費を計上する仕訳には、間接法と直接法の2つの書き方があります。借方は、どちらも「減価償却費」で同じです。違いは、貸方です。
| 記帳方法 | 仕訳(具体例1の場合) | 備品の勘定 |
|---|---|---|
| 間接法 | (借)減価償却費 120,000/(貸)備品減価償却累計額 120,000 | 取得原価のまま、変わらない |
| 直接法 | (借)減価償却費 120,000/(貸)備品 120,000 | 毎期、直接減っていく |
間接法で使う減価償却累計額は、資産のマイナス項目です。貸倒引当金と同じように、備品などの資産から差し引く形で、貸借対照表に表示します。どちらの方法で記帳するかは、問題文の指示か、試算表に「減価償却累計額」があるかどうかで判断します。3級の問題では、間接法で出題されることが多いです。
2年目以降の考え方
間接法では、減価償却累計額が、毎期、積み上がっていきます。備品の取得原価は、そのままです。
具体例3:2年目の決算
取得原価600,000円の備品(具体例1と同じ。耐用年数5年、残存価額ゼロ、間接法)を、前期の期首に取得した。前期末の減価償却累計額は120,000円である。当期末の仕訳と、貸借対照表の表示を答えなさい。
- 仕訳:(借)減価償却費 120,000/(貸)備品減価償却累計額 120,000
- 当期末の減価償却累計額:120,000円 + 120,000円 = 240,000円
- 貸借対照表:備品 600,000円 - 減価償却累計額 240,000円 = 360,000円
この360,000円を、帳簿価額といいます。毎期の減価償却費は同じ金額なので、仕訳の金額は変わりません。変わるのは、累計額のほうです。
期中に取得した場合の月割計算
期首以外の日に取得した場合は、使った月数に応じた金額だけを、費用にします。1年分の減価償却費に、月数 ÷ 12を掛けます。
具体例4:期中に取得した備品
当期の7月1日に、備品480,000円を取得した。耐用年数8年、残存価額ゼロ、定額法、間接法とする。決算日は、3月31日である。
- 1年分の減価償却費:480,000円 ÷ 8年 = 60,000円
- 当期の使用月数:7月から3月までの9か月
- 当期の減価償却費:60,000円 × 9か月 ÷ 12か月 = 45,000円
- 仕訳:(借)減価償却費 45,000/(貸)備品減価償却累計額 45,000
月数を数えるときは、取得した月も、1か月として数えます。問題文に「月割計算による」とあるかも、必ず確認してください。
期中に売却した場合
固定資産を売却したときは、売却した日までの減価償却費を、先に月割で計上します。そのうえで、売却価額と帳簿価額(取得原価 - 減価償却累計額)を比べて、差額を固定資産売却益または固定資産売却損にします。
具体例5:期中の売却
取得原価600,000円の備品(耐用年数5年、残存価額ゼロ、間接法)を、当期の9月30日に、330,000円で売却し、代金は現金で受け取った。前期末の減価償却累計額は、240,000円である。決算日は、3月31日で、当期の期首は4月1日である。
- 当期の減価償却費(4月から9月の6か月分):120,000円 × 6か月 ÷ 12か月 = 60,000円
- 売却時の減価償却累計額:240,000円 + 60,000円 = 300,000円
- 帳簿価額:600,000円 - 300,000円 = 300,000円
- 売却益:330,000円 - 300,000円 = 30,000円
仕訳は、次の2つに分けて考えます。
- 売却日までの償却:(借)減価償却費 60,000/(貸)備品減価償却累計額 60,000
- 売却:(借)備品減価償却累計額 300,000 現金 330,000/(貸)備品 600,000 固定資産売却益 30,000
売却価額が帳簿価額より低いときは、差額を固定資産売却損(借方)にします。借方と貸方の合計が一致するように、差額で求めると、間違えにくくなります。
精算表・貸借対照表での扱い
精算表では、「減価償却費」と「備品減価償却累計額」の2つが、修正記入欄に出てきます。試算表にない「減価償却費」は、空いた行に書き足し、借方に記入します。「備品減価償却累計額」は、すでにあれば、その行の貸方に、今期分を加えます。貸借対照表では、備品などの下に、減価償却累計額をマイナスで表示します。
精算表全体の解き方は、簿記3級 精算表の書き方・解き方で説明しています。
ミスしやすいポイント
- 残存価額を、引き忘れる。「取得原価の10%」のように指示があるときは、必ず(取得原価 - 残存価額)で計算します。
- 月割計算を、忘れる。期中に取得・売却したときは、使った月数で、日割ではなく月割にします。
- 間接法で、貸方を「備品」にしてしまう。間接法の貸方は「備品減価償却累計額」です。「備品」を直接減らすのは、直接法です。
- 土地を、償却してしまう。土地は、減価償却をしません。
- 累計額の金額を、前期末の金額のままにしてしまう。貸借対照表に載せる累計額は、前期末の累計額に、当期の減価償却費を加えた金額です。
- 売却のとき、売却日までの償却を、忘れる。先に償却の仕訳をしてから、売却の仕訳をします。
練習問題で、身につけよう
- 仕訳の練習:決算整理仕訳2(減価償却・固定資産の売却ほか)
- 精算表で練習:精算表作成②、精算表作成④、精算表作成⑥(期中に取得した備品の月割計算も出題されます)
- 貸借対照表で練習:貸借対照表・損益計算書作成⑥(残存価額が10%の場合)、貸借対照表・損益計算書作成⑤(備品の売却)
決算整理の他の論点は、簿記3級 貸倒引当金(差額補充法)の仕訳と計算、簿記3級 経過勘定の違いと仕訳で解説しています。第3問全体の対策は、簿記3級 第3問の対策をご覧ください。
