労務費 応用編(予定賃率・賃率差異)

【工業簿記】労務費(応用編)
基礎編で見た「発生 → 消費」の流れに、予定賃率という考え方を追加します。
直接工…あらかじめ決めた予定賃率で消費額を計算し、月末に実際の金額との差(賃率差異)を計算する。間接工…基礎編と同じく、実際に発生した金額をそのまま使う。
【問1】仕訳 →【問2】要支払額の計算 →【問3】賃率差異 →【問4】勘定連絡図 の順に進めると、全体がつながって見えてきます。
【問1】仕訳を答えなさい
港南製作所(機械部品の製造)の×2年7月の取引です。基礎編と同じ資料を用いますが、直接工の消費には予定賃率を使う点が異なります。

(1) 前月末に計上した未払賃金110,000円(直接工80,000円、間接工30,000円)について、再振替仕訳を行った。

借方
貸方

(2) 直接工の当月賃金支給総額720,000円を当座預金から支払った。

借方
貸方

(3) 間接工の当月賃金支給総額290,000円を当座預金から支払った。

借方
貸方

(4) 当月末に、直接工90,000円と間接工35,000円、合計125,000円の未払賃金を計上した。

借方
貸方

(5) 当工場は直接工に予定賃率1時間あたり1,200円を用いている。当月の直接工の作業時間は、直接作業550時間・間接作業40時間・手待時間20時間であった。消費に関する仕訳を示しなさい。

借方
貸方

(6) 間接工の当月要支払額295,000円を製造間接費に振り替えた。

借方
貸方

(7) 賃金・給料勘定の貸借差額(貸方が2,000円多い)を賃率差異勘定に振り替えた。

借方
貸方

(8) (理解確認)仮に賃金・給料勘定の貸借差額が「借方が1,500円多い」状態であった場合、賃率差異を計上する仕訳を示しなさい。

借方
貸方

(9) 会計年度末に、賃率差異勘定の貸方残高2,000円を売上原価に振り替えた。

借方
貸方
【問2】当月の要支払額(消費額)を計算しなさい
【資料】×2年7月の賃金に関する資料は次のとおりであった。
  • 直接工 前月未払額80,000円/当月支給総額720,000円/当月未払額90,000円
  • 間接工 前月未払額30,000円/当月支給総額290,000円/当月未払額35,000円
色のついた欄に金額を記入してください。当月要支払額=当月支給総額-前月未払額+当月未払額で計算します。この金額は問3で「実際消費額」として使います。
直接工間接工合計
前月未払額80,00030,000
当月支給総額720,000290,000
当月未払額90,00035,000
当月要支払額(消費額)
【問3】賃率差異を計算しなさい
【資料】直接工には予定賃率 1時間あたり1,200円を用いている。当月の直接工の総就業時間は610時間(直接作業550時間・間接作業40時間・手待時間20時間)であり、実際消費額は問2で求めた直接工の当月要支払額である。
予定消費額(@1,200×610時間)
実際消費額(要支払額)
賃率差異
この差異は  である。
【問4】賃金・給料まわりの勘定連絡図を完成させなさい
問1〜問3で見てきた取引を、勘定どうしのつながりとして1枚に整理します。中央の賃金・給料勘定が主役です。
① 空欄には相手勘定科目を選び、金額を入力する。ただし、勘定によっては借方・貸方のどちらか一方しか今月の取引がないものもあります。本当に取引があった側かどうかを考えながら埋めましょう。
(貸方側の赤い○)から (借方側の青い○)へドラッグして、線で結ぶ(逆方向からでも引けます)。
③ 引いた線をクリックすると、その線だけ消せます。
当座預金
借方貸方
未払賃金
借方貸方
賃率差異
借方貸方
賃金・給料
借方貸方
仕掛品
借方貸方
製造間接費
借方貸方
📋 模範解答(要支払額の計算表)
直接工間接工合計
前月未払額80,00030,000110,000
当月支給総額720,000290,0001,010,000
当月未払額90,00035,000125,000
当月要支払額(消費額)730,000295,0001,025,000
📌 賃率差異
直接工の予定消費額 = @1,200 × 610時間(550+40+20)= 732,000円
実際消費額(要支払額) = 730,000円(問2で求めた金額)
差異 = 732,000 - 730,000 = 2,000円(有利差異・貸方差異)
有利差異(貸方差異)不利差異(借方差異)
大小関係予定 > 実際予定 < 実際
意味思ったより安く済んだ思ったよりかかった
差異の仕訳(借)賃金・給料/(貸)賃率差異(借)賃率差異/(貸)賃金・給料
本問732,000 > 730,000 → 該当
なぜ賃金・給料が借方に出てくるのか:消費のときに賃金・給料勘定から減らしたのは予定額732,000円でした。でも実際に発生した金額は730,000円ぶんだけです。減らしすぎた2,000円を賃金・給料勘定に戻すため、借方に賃金・給料と書きます。これは材料の「材料消費価格差異」と全く同じ「戻す」というイメージです。間接工には予定賃率を使っていないため、差異は直接工の分だけに生じます。
📊 賃金・給料勘定の全体像
賃金・給料
当月支給総額(720,000+290,000)1,010,000
当月未払(90,000+35,000)125,000
(借方合計)1,135,000
前月未払(80,000+30,000)110,000
予定消費額(仕掛品・製造間接費へ)1,027,000
賃率差異(戻し)2,000
(貸方合計)1,137,000
賃金・給料勘定に、これまでの取引をすべて集めるとこうなります。借方合計1,135,000円に賃率差異2,000円を足すと、貸方合計1,137,000円と一致することを確かめましょう。基礎編と違い、直接工の消費に予定賃率を使っているため、この差額(差異)が生じます。
🔗 勘定連絡図の読み方(問4)
📋 模範解答(勘定連絡図)
当座預金
借方貸方
賃金・給料1,010,000
未払賃金
借方貸方
賃金・給料110,000
賃金・給料125,000
賃率差異
借方貸方
賃金・給料2,000
賃金・給料
借方貸方
当座預金1,010,000
賃率差異2,000
未払賃金125,000
未払賃金110,000
仕掛品660,000
製造間接費48,000
製造間接費24,000
製造間接費295,000
仕掛品
借方貸方
賃金・給料660,000
製造間接費
借方貸方
賃金・給料48,000
賃金・給料24,000
賃金・給料295,000
未払賃金だけ、借方・貸方の両方に本物の答えがある理由:未払賃金は「前月分の取消(借方)」と「当月分の見積り計上(貸方)」という、性質の異なる2つの動きが同じ月の中で起きるため、他の勘定と違って両側とも実際に埋める対象になります。
製造間接費が3行に分かれている理由:この図では、賃金・給料勘定の貸方から製造間接費への流れを間接作業48,000円手待時間24,000円間接工295,000円という原因の違う3つの金額に分けて描いています。原因を区別して理解してもらうためのもので、実際に総勘定元帳の製造間接費勘定へ記帳するときは、同じ相手科目(賃金・給料)への記入をまとめて1行(賃金・給料 367,000)にするのが一般的です。この問題では、3行に分けて解答しても、直接工分をまとめて「製造間接費 72,000」+間接工「295,000」の2行にしても、すべてまとめて「製造間接費 367,000」と1行・線1本で結んでも、どれも正解になります。