【税効果会計ドリル】 会計上の利益と税法上の課税所得のズレを調整する論点です。Ⅰ貸倒引当金 → Ⅱ減価償却 → Ⅲその他有価証券 → Ⅳ将来減算・将来加算 の順に並んでいます。
解く前に、次の3つを押さえておくと迷いません。
① 差異の金額に法定実効税率を掛ける(会計と税法の差額 × 税率)
② 差異が生じたら計上、解消したら取り崩す(仕訳は逆になる)
③ 相手科目は原則「法人税等調整額」。ただし、その他有価証券の評価差額だけは「その他有価証券評価差額金」(損益を通さないため)
次の仕訳問題を解いてみてください。
問題1: 決算にあたり、貸倒引当金100,000円を繰り入れたが、その全額が税法上、損金として認められなかった。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
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① 会計と税法でズレが出る
会計貸倒引当金繰入
100,000円を費用にする
≠
税法損金として
認められない(0円)
税法が費用を認めてくれない分、課税所得が大きくなり、今期の税金が多くなります。でもこの引当金は、将来実際に貸倒れたときには税法でも認められます。つまり今多く払った税金は、将来戻ってくる=前払いした税金と考えます。
② 差異 × 税率 で金額を出す
差異100,000円
× 30%
繰延税金資産30,000円
③ なぜこの貸借?
税金の前払い=将来戻ってくる権利 → 資産なので借方
相手科目は「法人税等調整額」を貸方に置き、法人税等を実質的に減らす
(借)繰延税金資産 30,000 /(貸)法人税等調整額 30,000
問題2: 決算にあたり、売掛金に対して貸倒引当金180,000円を繰り入れたが、このうち税法上の繰入限度額は60,000円であった。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
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① 繰入額のうち、税法が認めるのは一部だけ
税法が認める 60,000
認められない 120,000
会計上の繰入額 180,000円
税効果の対象になるのは、はみ出した赤い部分だけです。180,000円全体でも、60,000円でもありません。まず 180,000 − 60,000 = 120,000円(損金不算入額)を出すのが第一歩です。
② 差異 × 税率
損金不算入額120,000円
× 30%
繰延税金資産36,000円
(借)繰延税金資産 36,000 /(貸)法人税等調整額 36,000
問題3: 前期に損金不算入となった貸倒引当金120,000円について、当期に貸倒れが確定し、税法上も損金として認められた。前期末に計上した繰延税金資産36,000円を取り崩す。法定実効税率は30%である。
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差異の一生:発生 → 解消
前期差異が発生
税金を多く払った
→
繰延税金資産
36,000円を計上
→
当期貸倒れ確定=解消
税金が減った
→
取り崩して
0円
仕訳は前期とちょうど逆になる
前期(発生):(借)繰延税金資産 36,000 /(貸)法人税等調整額 36,000
▼ 借方と貸方を入れ替える
当期(解消):(借)法人税等調整額 36,000 /(貸)繰延税金資産 36,000
前払いしていた税金の効果が実現したので、繰延税金資産という「権利」を消します。このとき法人税等調整額は借方となり、法人税等を実質的に増やす働きをします。
損益計算書での見え方
※ 説明のための仮定として、税引前当期純利益は前期・当期とも1,000,000円とします。
なぜ調整が必要なのかが、ここで分かります。
前期は引当金が損金と認められず課税所得が1,120,000円に膨らむため、法人税等は336,000円と多くなります。逆に当期は貸倒れが認められて課税所得が880,000円に減るので、法人税等は264,000円と少なくなります。
税引前当期純利益はどちらも1,000,000円で同じなのに、税金だけがバラついてしまうのです。
そこで法人税等調整額で前期は△36,000、当期は+36,000と加減すると、税金の負担額はどちらも300,000円(=1,000,000×30%)に揃い、当期純利益も700,000円で安定します。
発生した期に減らし、解消する期に増やす——この往復で、毎期の利益と税金が対応します。
問題4: 決算にあたり、貸倒引当金の損金不算入額は当期末が150,000円、前期末は90,000円であった。前期末の繰延税金資産27,000円が計上されている。法定実効税率30%として、当期末に必要な税効果会計の仕訳を示しなさい。
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「残高」で考えて、差額だけを動かす
前期末の残高90,000×30%
=27,000円
→ 差額 +18,000 →
当期末のあるべき残高150,000×30%
=45,000円
当期末のあるべき残高 45,000円
45,000円をそのまま計上してはいけません。すでに27,000円が計上されているので、二重になってしまいます。仕訳で動かすのは不足している18,000円だけ。貸倒引当金の差額補充法とまったく同じ考え方です。
(借)繰延税金資産 18,000 /(貸)法人税等調整額 18,000
問題5: 決算にあたり、貸倒引当金の損金不算入額は当期末が80,000円、前期末は140,000円であった。前期末の繰延税金資産42,000円が計上されている。法定実効税率30%として、当期末に必要な税効果会計の仕訳を示しなさい。
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今度は残高が「減る」ケース
前期末の残高140,000×30%
=42,000円
→ 差額 −18,000 →
当期末のあるべき残高80,000×30%
=24,000円
前期末の残高 42,000円
やり方は前問とまったく同じで、あるべき残高と現在の残高の差だけを動かします。今回は減るので、前問と貸借が逆になります。
前問との対比
残高が増える:(借)繰延税金資産 /(貸)法人税等調整額
残高が減る :(借)法人税等調整額 18,000 /(貸)繰延税金資産 18,000
問題6: 決算にあたり、備品の減価償却費300,000円を計上したが、税法上の償却限度額は200,000円であった。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
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① 会計の減価償却費が、税法の限度額をはみ出す
会計上の減価償却費 300,000円
はみ出した100,000円は今期の損金になりません。ただし将来、税法上の償却が続く期間に損金として認められるので、税金の前払いと考えて繰延税金資産を計上します。貸倒引当金の繰入限度超過(問2)とまったく同じ構造です。
償却限度超過額100,000円
× 30%
繰延税金資産30,000円
(借)繰延税金資産 30,000 /(貸)法人税等調整額 30,000
問題7: 決算にあたり、当期首に取得した備品1,200,000円について、会計上は耐用年数4年、税法上は耐用年数6年(いずれも定額法・残存価額ゼロ)として減価償却を行った。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
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① 耐用年数が違うと、1年分の費用も変わる
会計1,200,000 ÷ 4年
=300,000円
−
税法1,200,000 ÷ 6年
=200,000円
=
超過額100,000円
耐用年数が短いほど、1年あたりの費用は大きくなります。会計(4年)のほうが税法(6年)より短いので、会計の費用がはみ出す=超過が生じます。逆に会計の年数のほうが長ければ、超過は生じません。
② 差異 × 税率
100,000円 × 30% = 30,000円
(借)繰延税金資産 30,000 /(貸)法人税等調整額 30,000
問題8: 前問の備品について、2年目の決算を迎えた。会計上・税法上とも1年目と同額の減価償却を行っている。法定実効税率30%として、2年目に必要な税効果会計の仕訳を示しなさい。
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① 6年間の差異の動き(会計4年 vs 税法6年)
1〜4年目は毎期100,000円ずつ差異が発生し、繰延税金資産が積み上がります(当期は2年目なので残高60,000円)。会計の償却が終わる5年目からは差異が解消し、6年目にちょうどゼロに戻ります。差異は必ずいつか解消する——これが「一時差異」と呼ばれる理由です。
② 損益計算書での見え方(税効果会計の目的)
※ 説明のための仮定として、税引前当期純利益は毎期1,000,000円とします。
ここが税効果会計のねらいです。
「法人税等」だけを見ると、1〜4年目は330,000円、5〜6年目は240,000円とバラついています。税引前当期純利益はどの年も1,000,000円で同じなのに、税金の額が違って見えてしまうのです。
そこで法人税等調整額で加減すると、税金の負担額はどの年も300,000円(=1,000,000×30%)に揃い、当期純利益も毎期700,000円で安定します。
つまり税効果会計とは、税引前当期純利益と法人税等をきちんと対応させるための調整なのです。
③ 当期(2年目)の仕訳
(借)法人税等 330,000 /(貸)未払法人税等 330,000 …実際の納税額
(借)繰延税金資産 30,000 /(貸)法人税等調整額 30,000 …本問の解答(税効果)
※ 法人税等調整額が貸方にあると、損益計算書では法人税等から差し引かれ(△30,000)、税金の負担額が330,000→300,000に減ります。5〜6年目は借方に出るので、逆に加算されます。
問題9: 会計上は耐用年数4年で償却が終わった備品について、税法上はまだ償却が続いており、当期の税法上の償却限度額200,000円が損金として認められた(会計上の減価償却費はゼロ)。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする
会計の償却が先に終わると、立場が逆転する
会計償却済み
費用 0円
<
税法まだ償却が続く
損金 200,000円
これまでとは逆に、税法の損金だけが計上される状態になります。その分だけ課税所得が小さくなり税金が減るので、積み上げてきた繰延税金資産(税金の前払い分)を取り崩していきます。
差異の解消 × 税率
200,000円 × 30% = 60,000円 を取り崩す
発生時と解消時の対比
発生(1〜4年目):(借)繰延税金資産 /(貸)法人税等調整額
▼ 貸借が逆になる
解消(5〜6年目):(借)法人税等調整額 60,000 /(貸)繰延税金資産 60,000
📘 損益計算書でどう見えるかは、問題8の図をご覧ください。
同じ設例の6年分をまとめた表があり、この5〜6年目にあたる部分も載っています。法人税等が240,000円に減る一方、法人税等調整額が+60,000円となって、税金の負担額は毎期300,000円で変わらない——という流れが確認できます。
問題10: 決算にあたり、その他有価証券(取得原価500,000円)の時価が600,000円となった。全部純資産直入法により処理する。法定実効税率30%として、税効果会計を適用した決算整理仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする
① 評価差額を出す
時価600,000円
−
取得原価500,000円
=
評価益100,000円
② 評価差額を「税金分」と「純資産分」に分ける
繰延税金負債 30,000
その他有価証券評価差額金 70,000
評価益 100,000円 = 100,000×30% + 残り
ここが最大のポイント。その他有価証券の評価差額は損益計算書を通さず、純資産に直接計上します。だから税効果の相手科目も「法人税等調整額」ではありません。税金相当分(30,000円)を繰延税金負債として取り分け、残り70,000円だけを評価差額金として純資産に載せます。
なお、評価益なので将来の税金が増える方向 → 繰延税金負債になります。
(借)その他有価証券 100,000 /(貸)繰延税金負債 30,000・その他有価証券評価差額金 70,000
問題11: 決算にあたり、その他有価証券(取得原価800,000円)の時価が600,000円となった。全部純資産直入法により処理する。法定実効税率30%として、税効果会計を適用した決算整理仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする
① 評価差額を出す(今回はマイナス)
時価600,000円
−
取得原価800,000円
=
評価損△200,000円
② 200,000円を「税金分」と「純資産分」に分ける
繰延税金資産 60,000
評価差額金 140,000
評価損 200,000円 = 200,000×30% + 残り
③ 評価益のとき(問10)と比べる
評価益:(借)その他有価証券 /(貸)繰延税金負債・評価差額金
▼ すべて逆になる
評価損:(借)繰延税金資産 60,000・評価差額金 140,000 /(貸)その他有価証券 200,000
評価損は将来の税金が減る方向なので、繰延税金資産になります。評価益=負債、評価損=資産、と対で覚えましょう。相手科目が法人税等調整額でない点は、益でも損でも同じです。
問題12: 期首を迎えたため、前期末に計上したその他有価証券の評価差額(取得原価500,000円、前期末時価600,000円、法定実効税率30%)について再振替仕訳を行う。
📊 図でイメージする
評価 → 翌期首に戻す、の繰り返し
前期首取得原価
500,000円
前期末に評価 →
時価
600,000円評価差額 +100,000
← 当期首に戻す
取得原価
500,000円
その他有価証券の評価差額は一時的なものなので、翌期首に必ず取得原価へ戻します(再振替仕訳)。そして期末にまた、その時点の時価で評価し直します。
仕訳は前期末とちょうど逆
前期末:(借)その他有価証券 100,000 /(貸)繰延税金負債 30,000・評価差額金 70,000
▼ 借方と貸方を入れ替えるだけ
当期首:(借)繰延税金負債 30,000・評価差額金 70,000 /(貸)その他有価証券 100,000
この仕訳で、その他有価証券は500,000円に戻り、繰延税金負債と評価差額金はどちらもゼロになります。新しい計算は不要で、前期末の仕訳をそのままひっくり返すだけです。
問題13: 決算にあたり、その他有価証券(取得原価1,000,000円)の時価が1,150,000円となった。全部純資産直入法により処理する。法定実効税率30%として、税効果会計を適用した決算整理仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする
計算は必ずこの3ステップ
STEP1評価差額を出す
1,150,000−1,000,000
=150,000円
→
STEP2税率を掛ける
150,000×30%
=45,000円
→
STEP3差額が評価差額金
150,000−45,000
=105,000円
繰延税金負債 45,000
評価差額金 105,000
評価益 150,000円
数字が変わっても手順は同じです。評価差額を出す → 税率を掛ける → 残りが評価差額金。この順番を固定しておけば、益でも損でも迷いません。
(借)その他有価証券 150,000 /(貸)繰延税金負債 45,000・その他有価証券評価差額金 105,000
問題14: 決算にあたり、その他有価証券の時価評価に伴い繰延税金負債45,000円を計上した。この処理により当期の法人税等調整額に計上される金額はいくらか。該当する仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする(税効果会計の全体像)
税効果には2つのルートがある
ルートA:損益を通る貸倒引当金の繰入限度超過
減価償却の償却限度超過
など▼
相手科目は
法人税等調整額 ルートB:純資産に直接その他有価証券の
評価差額
(これだけ)▼
相手科目は
その他有価証券評価差額金 本問はルートBなので、法人税等調整額は使いません。したがって法人税等調整額に計上される金額は0円で、追加の仕訳は不要(仕訳なし)です。
その他有価証券の評価差額は損益計算書を通らず、貸借対照表の純資産へ直接入ります。損益を通らない以上、法人税等を調整する必要もない——というのが理由です。
解答:仕訳なし(法人税等調整額は 0 円)
問題15: 決算にあたり、当期の法人税、住民税及び事業税の額が450,000円と算定された。なお、中間納付額はなく、全額を未払いとする。
📊 図でイメージする
決算の税金処理は「二段構え」
STEP1(本問)税法にもとづく実際の納税額を計上
(借)法人税等 450,000
(貸)未払法人税等 450,000
→
STEP2(税効果)会計の利益に見合う額へ調整
(借/貸)繰延税金資産など
(貸/借)法人税等調整額
STEP1で計上する法人税等は、あくまで税法の課税所得から計算された金額で、会計上の利益とは対応していません。
そこでSTEP2の税効果会計により、法人税等調整額で加減して、損益計算書上「利益に見合った税金」が表示されるようにします。
本問はSTEP1だけを問われているので、税効果の仕訳は登場しません。
(借)法人税等 450,000 /(貸)未払法人税等 450,000
問題16: 決算にあたり、将来減算一時差異の当期末残高は400,000円、前期末残高は250,000円であった。法定実効税率30%として、当期末に必要な税効果会計の仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする
「将来減算一時差異」とは
今期損金と認められず
税金を多く払う
→ 将来 →
将来損金と認められ
課税所得が減る
→
繰延税金資産(税金の前払い)
「将来減算」=将来の課税所得を減らす効果を持つズレ。貸倒引当金の繰入限度超過(問1〜5)や減価償却の償却限度超過(問6〜9)が、まさにこれです。
残高で考えて、差額だけ動かす
前期末250,000×30%
=75,000円
→ +45,000 →
当期末のあるべき残高400,000×30%
=120,000円
(借)繰延税金資産 45,000 /(貸)法人税等調整額 45,000
問題17: 決算にあたり、将来加算一時差異が200,000円生じた。法定実効税率30%として、税効果会計の仕訳を示しなさい。
📊 図でイメージする(総まとめ)
「将来加算一時差異」とは
今期税金が少なくて済む
→ 将来 →
将来課税所得が増える
=税金が増える
→
繰延税金負債(将来払う義務)
200,000円 × 30% = 60,000円
(借)法人税等調整額 60,000 /(貸)繰延税金負債 60,000
2つの一時差異を対比して覚える
| 将来減算一時差異 | 将来加算一時差異 |
|---|
| 将来の課税所得 | 減る | 増える |
| 計上する科目 | 繰延税金資産(借方) | 繰延税金負債(貸方) |
| 代表例 | 貸倒引当金の繰入限度超過 減価償却の償却限度超過 | その他有価証券の評価益 |
| 相手科目 | 法人税等調整額 | 法人税等調整額 ※その他有価証券は評価差額金 |
税効果会計は結局、差異 × 税率を計算して、資産か負債かを判断し、相手科目を選ぶ——この3つだけです。ここまで解けば全体像はつかめています。