総合原価計算(平均法・正常仕損)

【工業簿記】総合原価計算(平均法・正常仕損あり・完成品負担)
製造の途中で、材料の不良や加工のミスなどにより、やむを得ず発生してしまう仕損を正常仕損といい、その損失(正常仕損費)は良品の原価に含めて回収します。
正常仕損が月末仕掛品の加工進捗度よりも後の段階(たとえば工程の終点)で発生した場合、月末仕掛品はまだその段階に達していないため、正常仕損費は完成品のみが負担します。この問題では、仕損品の数量を「完成品の仲間」として換算量に含めて計算します(度外視法)。
平均法では、月初仕掛品原価と当月製造費用を区別せず合算し、「完成品+正常仕損品+月末仕掛品(換算量)」で割って、完成品・月末仕掛品に共通の単価を求めます。
【問1】生産データ・原価データの整理 →【問2】仕訳 →【問3】仕掛品勘定の完成 の順に進めましょう。
【問1】平均法により、生産データと原価データを整理しなさい
【資料】月島製菓(A製品の量産)の×3年9月の資料です。原料は工程の始点で投入し、加工費は加工の進み具合に応じて発生する。月初仕掛品・月末仕掛品の評価は平均法による。正常仕損は工程の終点で発生し、仕損品の評価額はゼロである。正常仕損費は完成品のみに負担させる(度外視法)。
  • 生産数量:月初仕掛品200個(加工進捗度50%)/当月投入800個/完成品800個/正常仕損品40個/月末仕掛品160個(加工進捗度50%)
  • 月初仕掛品原価:材料費100,000円/加工費52,000円
  • 当月製造費用:材料費400,000円/加工費500,000円
色のついた欄に数量・金額を記入してください。
①材料費のボックス図(原料は工程の始点で投入するため、仕損品も含めて数量がそのまま材料費の換算量になります)。空欄の完成品数量を、月初仕掛品・当月投入・正常仕損品・月末仕掛品の数量から差し引きで求めてください。
月初仕掛品
200個
(加工進捗度50%)
当月投入
800個
完成品
個
正常仕損品
40個
月末仕掛品
160個
(加工進捗度50%)
平均法では、月初仕掛品と当月投入をまとめて考え、完成品+正常仕損品+月末仕掛品(=800個+40個+160個=1,000個)を材料費の分母として使います。
②加工費のボックス図(加工費は加工の進み具合に応じて発生するため、「加工進捗度」を掛けた換算量で考えます。正常仕損は工程の終点で発生するので、仕損品の進捗度は100%です)。完成品数量は①のボックス図と同じ800個です。月初仕掛品換算量・正常仕損換算量・月末仕掛品換算量を計算したうえで、「当月投入換算量」を、完成品+正常仕損+月末仕掛品から月初仕掛品を差し引いて求めてください。
月初仕掛品換算量
個
当月投入換算量
個
完成品
800個
正常仕損換算量
個
月末仕掛品換算量
個
ここが先入先出法との違いです。平均法では、月初仕掛品換算量(100個)や当月投入換算量(820個)は使わず、完成品(800個)+正常仕損換算量(40個)+月末仕掛品換算量(80個)=920個をそのまま加工費の分母として使います(先入先出法では、逆にこの「当月投入換算量」を分母として使います)。
①の分母(材料費1,000個)と②の分母(加工費920個)を使い、月初仕掛品原価と当月製造費用の合計を割って、完成品・月末仕掛品に共通の単価を求めてください。月末仕掛品は正常仕損が発生する終点に達していないため、仕損費は負担しません。
材料費加工費合計
月初仕掛品原価100,00052,000
当月製造費用400,000500,000
合計
平均単価(@)円円-
材料費加工費合計
月末仕掛品原価
完成品原価
完成品単価(@)--円
📊 生産データ・原価データ(解答)
生産数量材料費換算量加工費換算量
月初仕掛品200個100個(200個×50%)
当月投入800個820個(差引)
完成品800個800個
正常仕損品40個40個(40個×100%)
月末仕掛品160個80個(160個×50%)
分母(平均法で使う数量)1,000個920個
材料費加工費合計
月初仕掛品原価100,00052,000152,000
当月製造費用400,000500,000900,000
合計500,000552,0001,052,000
平均単価@500円@600円-
月末仕掛品原価80,00048,000128,000
完成品原価420,000504,000924,000
完成品単価--@1,155円
加工費の換算量
月初仕掛品換算量:200個×50%=100個
正常仕損換算量:40個×100%=40個(終点で発生)
月末仕掛品換算量:160個×50%=80個
当月投入換算量(差引):800個+40個+80個-100個=820個(平均法ではこの数値は使いません)

平均法で使う分母(仕損品を完成品の仲間として含める)
材料費:800個+40個+160個=1,000個(材料は始点投入のため、仕損品も月末も100%)
加工費:800個+40個+80個=920個

平均単価
材料費:(100,000円+400,000円)÷1,000個=@500円
加工費:(52,000円+500,000円)÷920個=@600円

月末仕掛品原価(仕損費は負担しない)
材料費:160個×500円=80,000円
加工費:80個×600円=48,000円

完成品原価(合計-月末仕掛品原価)
材料費:500,000円-80,000円=420,000円
加工費:552,000円-48,000円=504,000円
合計=924,000円

完成品単価=924,000円÷800個=@1,155円
(内訳:材料費500円+加工費600円+正常仕損費の負担分 40個×(500円+600円)÷800個=55円)
平均法・完成品負担のポイントは、月初仕掛品原価(152,000円)と当月製造費用(900,000円)を区別せず合算し、正常仕損品を「完成品の仲間」として含めた1つの分母で割って単価を求めることです。この単価(材料@500円・加工@600円)は、完成品にも月末仕掛品にも同じ単価がそのまま使われます。月末仕掛品は仕損が発生する終点に達していないため、通常どおり単価×数量で評価され、残りの原価(正常仕損品の原価44,000円を含む)がすべて完成品原価になります。そのため、完成品単価(@1,155円)は材料費単価と加工費単価の合計(@1,100円)よりも、仕損費の負担分(@55円)だけ高くなります。なお、②のボックス図には先入先出法と同じ形式で「月初仕掛品換算量」「当月投入換算量」も表示していますが、平均法ではこれらの値は使わない点に注意してください。また、仕損が月末仕掛品の進捗度(50%)より前の段階で発生する場合は、月末仕掛品も負担する「両者負担」となり、仕損品の数量を除いて計算します。
【問2】仕訳を答えなさい
問1で計算した金額をもとに、材料費・加工費の計上と、完成品原価の振り替えを仕訳で確認します。

(1) 当月、A原料400,000円を工程に投入し、直接材料費として仕掛品勘定に計上した。

借方
貸方

(2) 当月の加工費500,000円を仕掛品勘定に計上した。

借方
貸方

(3) 当月完成した製品の原価924,000円を、仕掛品勘定から製品勘定に振り替えた。

借方
貸方
【問3】仕掛品勘定を完成させなさい
問1・問2の金額を使って、仕掛品勘定(T字勘定)に記入します。色のついた欄に金額を記入してください。
仕 掛 品
借方貸方
前月繰越152,000製  品
材  料次月繰越
製造間接費
合計合計
📊 仕掛品勘定(解答)
借方貸方
前月繰越152,000製  品924,000
材  料400,000次月繰越128,000
製造間接費500,000
合計1,052,000合計1,052,000
仕掛品勘定の借方には、前月から繰り越された月初仕掛品原価(152,000円)と、当月新たに発生した材料費(400,000円)・加工費(500,000円)が集計されます。貸方には、完成して製品勘定へ振り替えられた完成品原価(924,000円)と、翌月に繰り越される月末仕掛品原価(128,000円)が記入され、借方合計と貸方合計はどちらも1,052,000円で一致します。正常仕損品の原価は貸方に別建てで表れず、完成品原価の中に含まれています。