総合原価計算(先入先出法・正常仕損)

【工業簿記】総合原価計算(先入先出法・正常仕損あり・完成品負担)
製造の途中で、材料の不良や加工のミスなどにより、やむを得ず発生してしまう仕損を正常仕損といい、その損失(正常仕損費)は良品の原価に含めて回収します。
正常仕損が月末仕掛品の加工進捗度よりも後の段階(たとえば工程の終点)で発生した場合、月末仕掛品はまだその段階に達していないため、正常仕損費は完成品のみが負担します。この問題では、仕損品の数量を「完成品の仲間」として換算量に含めて計算します(度外視法)。
【問1】生産データ・原価データの整理 →【問2】仕訳 →【問3】仕掛品勘定の完成 の順に進めましょう。
【問1】先入先出法により、生産データと原価データを整理しなさい
【資料】月島製菓(A製品の量産)の×3年8月の資料です。原料は工程の始点で投入し、加工費は加工の進み具合に応じて発生する。月初仕掛品・月末仕掛品の評価は先入先出法による。正常仕損は工程の終点で発生し、仕損品の評価額はゼロである。正常仕損費は完成品のみに負担させる(度外視法)。
  • 生産数量:月初仕掛品200個(加工進捗度40%)/当月投入800個/完成品700個/正常仕損品50個/月末仕掛品250個(加工進捗度60%)
  • 月初仕掛品原価:材料費108,000円/加工費24,000円
  • 当月製造費用:材料費480,000円/加工費574,000円
色のついた欄に数量・金額を記入してください。
①材料費のボックス図(原料は工程の始点で投入するため、仕損品も含めて数量がそのまま材料費の換算量になります)。空欄の完成品数量を、月初仕掛品・当月投入・正常仕損品・月末仕掛品の数量から差し引きで求めてください。
月初仕掛品
200個
(加工進捗度40%)
当月投入
800個
(=材料費の当月投入換算量)
完成品
個
正常仕損品
50個
月末仕掛品
250個
(加工進捗度60%)
②加工費のボックス図(加工費は加工の進み具合に応じて発生するため、「加工進捗度」を掛けた換算量で考えます。正常仕損は工程の終点で発生するので、仕損品の進捗度は100%です)。完成品数量は①のボックス図と同じ700個です。月初仕掛品換算量・正常仕損換算量・月末仕掛品換算量を計算したうえで、「当月投入換算量」を、完成品+正常仕損+月末仕掛品から月初仕掛品を差し引いて求めてください。
月初仕掛品換算量
個
当月投入換算量
個
完成品
700個
正常仕損換算量
個
月末仕掛品換算量
個
①のボックス図の「当月投入」(材料費換算量800個)と、②のボックス図の「当月投入換算量」(加工費換算量820個)を使い、当月製造費用(材料費480,000円・加工費574,000円)を割って単価を求めます(材料費@600円・加工費@700円)。この単価を使って、月末仕掛品原価を計算してください。月末仕掛品は正常仕損が発生する終点に達していないため、仕損費は負担しません。
材料費加工費合計
月初仕掛品原価108,00024,000
当月製造費用480,000574,000
合計
材料費加工費合計
月末仕掛品原価
完成品原価--
完成品単価(@)--円
📊 生産データ・原価データ(解答)
生産数量材料費換算量加工費換算量
月初仕掛品200個80個(200個×40%)
完成品700個700個
正常仕損品50個50個(50個×100%)
月末仕掛品250個150個(250個×60%)
当月投入換算量800個820個
材料費加工費合計
月初仕掛品原価108,00024,000132,000
当月製造費用480,000574,0001,054,000
合計588,000598,0001,186,000
(参考)当月投入分の単価@600円@700円-
月末仕掛品原価150,000105,000255,000
完成品原価--931,000
完成品単価--@1,330円
当月投入換算量(先入先出法・完成品負担)
材料費:700個+50個+250個-200個=800個(材料は始点投入のため、仕損品も月初・月末も100%)
加工費:700個+50個×100%+250個×60%-200個×40%=700+50+150-80=820個

当月投入分の単価(月末仕掛品の計算に使う単価)
材料費:480,000円÷800個=@600円
加工費:574,000円÷820個=@700円

月末仕掛品原価
材料費:250個×600円=150,000円
加工費:150個×700円=105,000円

完成品原価=132,000円+1,054,000円-255,000円=931,000円
完成品単価=931,000円÷700個=@1,330円

(検算)完成品原価931,000円の内訳
月初仕掛品原価 132,000円
+月初仕掛品の残りの加工(200個×(100%-40%)=120個)×700円=84,000円
+当月着手・当月完成分(700個-200個=500個)×(600円+700円)=650,000円
+正常仕損品の原価(50個×600円+50個×700円)=65,000円
=132,000+84,000+650,000+65,000=931,000円
完成品負担のポイントは、正常仕損品を「完成品の仲間」として数量・換算量に含めて計算することです。仕損品の分も当月投入量に含めて単価を求めるため、月末仕掛品は@600円・@700円で通常どおり評価され(仕損費を負担しない)、完成品原価は「合計-月末仕掛品原価」で求めるため、仕損品の原価(65,000円)が自然に完成品原価へ含まれます。なお、仕損が月末仕掛品の進捗度(60%)より前の段階で発生する場合は、月末仕掛品も正常仕損費を負担する「両者負担」となり、仕損品の数量を除いて計算します。先入先出法では、月初仕掛品原価(132,000円)がそのまま完成品原価に含まれるため、完成品単価(@1,330円)は当月投入分の単価(@600円・@700円)の合計とは一致しません。
【問2】仕訳を答えなさい
問1で計算した金額をもとに、材料費・加工費の計上と、完成品原価の振り替えを仕訳で確認します。

(1) 当月、A原料480,000円を工程に投入し、直接材料費として仕掛品勘定に計上した。

借方
貸方

(2) 当月の加工費574,000円を仕掛品勘定に計上した。

借方
貸方

(3) 当月完成した製品の原価931,000円を、仕掛品勘定から製品勘定に振り替えた。

借方
貸方
【問3】仕掛品勘定を完成させなさい
問1・問2の金額を使って、仕掛品勘定(T字勘定)に記入します。色のついた欄に金額を記入してください。
仕 掛 品
借方貸方
前月繰越132,000製  品
材  料次月繰越
製造間接費
合計合計
📊 仕掛品勘定(解答)
借方貸方
前月繰越132,000製  品931,000
材  料480,000次月繰越255,000
製造間接費574,000
合計1,186,000合計1,186,000
仕掛品勘定の借方には、前月から繰り越された月初仕掛品原価(132,000円)と、当月新たに発生した材料費(480,000円)・加工費(574,000円)が集計されます。貸方には、完成して製品勘定へ振り替えられた完成品原価(931,000円)と、翌月に繰り越される月末仕掛品原価(255,000円)が記入され、借方合計と貸方合計はどちらも1,186,000円で一致します。正常仕損品の原価は貸方に別建てで表れず、完成品原価の中に含まれています。